心地よい混乱

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芥川賞受賞作『コンビニ人間』を読みました。小説家の想像力と筆力には心から脱帽します。内容は実際に読んだほうが良いと思うので、やや抽象度の高い感想(感覚?体験?)のみ。

誰しも、特定の現象・人物に対して「これは変だ」と思う感覚を持っているのではないでしょうか。「価値観」や「規範」とも呼ばれる、その感覚には「境界」があるのかなと、私は考えています。「ここまで来ると違和感を覚える」という意味での境界です。

私の場合、そうした境界は、小説を読む中で、特定の登場人物に知らず知らず加担するという形で表出することが多い。ところが、『コンビニ人間』が興味深いのは、境界が少しずつズレていく感覚を覚えるのです。

何に・誰に違和感を覚えるのか。その境界が読み進めるうちにズレていき、心地よい混乱が残りました。